ラップなしでは語れない

  • 2020年8月8日
  • 音楽

 ヒップホップ、あるいはラップについて、私は特にしっかりと聴いてきたわけではないので、語るべきではないと思うのだけど、1991年生まれの自分にとって、自分たちの世代の音楽遍歴を考えるうえでラップを避けては通れないのじゃないかと思う。ぼんやりしてたときにふとこんなことを思った。

結論から言うと、本当は好きだったラップを、ロック好きを自称してた時期に押さえつけてたのはすごくつまらないと思うので、かっこいいもの、乗れるものはそのまま楽しんだ方がいいよなあということ。あと、00年代の音楽って楽しかったなって。今日はそれについて少し。

音楽に影響を受ける環境は2種類あると思う。1つは幼少期から小学校(あるいは中学校)時代ごろまでの、自分で選ばずに外から入ってくる音楽に影響を受けるというような環境。もう1つは、自分で選び取ってどんどん深みにはまっていく環境。

別に理論でもなんでもないのだが、私はそうだったと思う。今でこそ、サブスクリプションの音楽サービスで自分の好みで音楽を聴いているけど(自分で選ぶ環境)、幼少期は自分にとって音楽は未知の領域がすごく大きかったから、売れてるものもそうでないものも、人から教えられるがまま、両親がカーステレオで流すまま、あるいはテレビで流れるがままに吸収していた時期があった。

そういう意味で、私が受動的に吸収してきたのは90年代と00年代前半のJ-POPだった(両親の影響はそれ以上昔のJ-POPか)。本当は洋楽とかにこのくらいで触れてたらよかったなと思うのだけど、まあそれはなかったのだから今更しょうがない。私は1991年生まれだから、1998年春に小学校入学、2007年春に中学校卒業(だと思う)ということで、ちょうど義務教育を受けていたあたりの音楽だ。

90年代の音楽としては、私の愛するスピッツをはじめ、ミスチル、ウルフルズや当時はやってたクラブ系の音楽とか。

そして、私が一番流行に興味があったのが00年代前半。

当時のヒットチャートを象徴していたと思うジャンルの一つは、BUMP OF CHICKEN、キンモクセイ、アンダーグラフのような90年代の遺伝子を引き継いだロックバンド(チョイスは完全に趣味;場合によってはモー娘。とかも、つんく♂プロデュースという意味でここに乗るのかも)。ある意味においては、00年代というのは「ロックバンド」が大衆受けする最後の時代だった気もする。バンドは今でも人気だし、BUMPの系譜は今も続いてるし、アングラは今も活発だし、うまく言葉では説明できないのだけど。

そして、ラップ。m-flo、KICK THE CAN CREW、RIP SLYME、ケツメイシのようなチャートでヒット曲を連発するヒップホップアーティストとDragon Ash、麻波25、ORANGE RANGEのようなミクスチャーロックバンドの流行があり、かなりラップが世間に浸透した時期だったと思う(あとあとWikipediaとか某ラジオとかで日本のヒップホップの歴史が語られているのを聞いての感想)。

こう考えると、私より一世代上にとってはまだコアな文化だったのではないかと思われるラップという文化を、私の世代だと割と自然にそこを通ってきたところはあるのではないか。私は中学生の時に、ケツメイシの「涙」とか「さくら」とかをカラオケで歌えるようにがんばって練習していた。今もきっと歌えるのではないかと思う。RIP SLYMEの「楽園ベイベー」はあまりにもチャートでよく聞いたので、頭の中でしょっちゅうメロディが流れていた。

m-flo/come again

ケツメイシ/涙

RIP SLYME/楽園ベイベー

Dragon Ash/Fantasista
麻波25/SONS OF THE SUN

その後、高校に入るにつれて私はアコギを弾き、ベースを弾き、バンドで頭を振るようになり、ヒットチャートを嫌厭するようになる。それにつれて、ヒップホップにも興味を示さなくなっていった。

そのまま高校から大学にかけて、Led ZeppelinからHR/HMにはまり、パンクに走り、メロデスに走り、オールドロックにはまり、ジャズ研に入りと、音楽にはずっと触れていたのだけど、ラップにはまる期間はあまりなかった。

それが、最近は(聴くアーティストは限られているながら)ヒップホップとかラップ音楽とかを意識して聴くことが多くなった。そのきっかけとなったのがこの動画。

これ、非公式動画なんですね。Rhymester「ザ・グレート・アマチュアリズム」とモーニング娘。「恋愛レボリューション21」のマッシュアップ。著作権的には触れちゃいけないところなのかもしれないけど、この作品はあまりにかっこいいので。。誰の仕事なのかもよく知らないのだけど、とにかく、いい。

大学生の当時、Youtubeを日常的に使い始めたときになんとなく懐かしのモー娘。を色々物色していたら、たまたまこの曲に出会った。それで、なんだこれはめっちゃかっこいい、、となり、色々調べまくってようやくRHYMESTERを知り、能動的にヒップホップを聴くようになった。RHYMESTERを知ったのが2010年代前半だから、まったくもってヒップホップについて偉そうなことは言えない。

Rhymester/The Choice Is Yours

Base Ball Bear/The Cut -feat. Rhymester

当時、ちょうど発売されてたのが確かここらへんだったかと思う。1曲目は「The Choice Is Yours」。00年代のヒップホップはどうしてもチャラい印象があって、「もっとまじめなロックの方が好き」(まじめなロックとは何ぞやというのはとりあえずノータッチでお願いします)だったのだけど、これを聴いたときにこんな風に社会に対する熱がこめられた曲もあるんだなあとはまった記憶がある。こういうのって、1970年代ごろのロックンロールとかブラックミュージックが持ってた熱に近いものを感じる。

2曲目は、高校時代にたまに聴いていたBase Ball Bearとのフィーチャリング曲で「The Cut -feat. RHYMESTER-」。これもかっこいい。途中のMummy Dのライムに惚れた。

「変わらない世界」「変われない世代」

「変わらない気分」「変われない自分」

変わらない陳腐なヘッドライン 変えたいならば今がデッドライン

変わらない景色の中から 切り出すのさ奇跡のワンパターン

Just cut! Chop! Rip! Slice! 切り取れ闇を鮮やかに

Base Ball Bear「The Cut -feat. RHYMESTER-」

ろくに知識がない人間からしても、この方のラップはなんというか、すごくセクシーでクールで乗りやすい。歌詞の内容も、色々迷いがちな私にはすごく響いたし、このこれでもかと畳みかける韻がすごく気持ちいい。なんというか、別にラップ自体にそれほど執着があるわけでない自分にしても、この方の畳みかける韻はすごく耳に気持ちがいいから、韻を踏むって技術的なものじゃなく何かしら本能的に響くものなんだろうなと思う。

そういえば上にチャラいがどうのと書いたが、20歳頃から変わって最近は、チャラいとかそういう決めつけはやめるよう意識している。結局、音楽はかっこいいかそうでもないか(あるいは楽しいかそうでもないか)以外に気にしないといけないものはないんだろうなと思うようにしている。変なこだわり、偏屈な姿勢は自分と音楽の出会いを狭めるだけだからやめときゃよかったなと。自分が好むかどうかの直感を大事にしたい。

次の曲はチャラいというか、自分とは住んでる環境が違いすぎるという意味で、一時期の自分は避けたであろう感じのもの。いや、これを細々した屁理屈で嫌厭するとか、損してるにもほどがあるよ、まったく。

KREVA/ファンキグラマラス feat. Mummy-D

その後も、ヒップホップファンとは言い難いものの、自分が好きになれるものを能動的に探すようになった。偏りがあるけど、最近よく聴くのはこんな感じ。

Creepy Nuts/生業

chelmico/Player

MOROHA/tomorrow

やっぱり振り返ってみて、ヒップホップ好きとはとても自分からは言えないなあと思うが、一方でやはり91年生まれにはラップは必然的に通らざるを得なかったとも思う。

小学生の時とか中学生の時とか、ヒットチャートを聴きながら本能的に楽しんでいたはずのラップという音楽形態を、高校くらいからの10年くらいの間、ロック好きになるにつれて嫌厭したのはあまりに形式主義が過ぎたと思うし、幼稚で偏屈で退屈でつまらない生き方だったなと思う。もう、自分が楽しいと思う音楽は、それをそのまま受け入れた方が得だよなと思う今日この頃。耳によければすべてよし。

00年代の音楽は肩の力が抜けててよかったなとか、こんなセリフが出るのは、私も中年の入口に立ちつつあるということだろうか。

そんなことを考えていたというお話でした。

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