雰囲気嗜好;A Rainy Day in New Yorkを観て

  • 2020年7月23日
  • 映画

 こんにちは、RTです。

今日は、住んでいる街のシネコンでウディ・アレン監督の 「A Rainy Day in New York」を観てきた。鑑賞後の気持ちがなんだかよかったので、簡単な感想とそこからなんとなく自分自身について考えたことを記録しておきたい。

映画の情報はこちらから。

映画.com「レイニーデイ・イン・ニューヨーク:作品情報」
https://eiga.com/movie/92925/

ちなみに、監督のウディ・アレンは#MeToo運動でちょっとごたごたあった(Wikipedia等で読む限り、90年代に訴えられたが、司法の場では罪には問われなかったとのことなので、少なくともこれら事実に基づく限りは誤解である模様)みたいで、公開の先送りとかがあったみたい(→ リンク)。

それはさておき、映画はとてもよかった。ジャンルとしては「ロマンティック・コメディ」というものに振り分けられるみたいだが、たしかにそういう感じだった。コメディとはいえ、手を叩いて大爆笑が起こるような映画ではない。雨のニューヨークを舞台としたおしゃれな空気のなかで、一癖二癖ある登場人物たちがちょっとした出来事に巻き込まれる。

ウディ・アレン監督、と大々的に書いたものの、私がこれまでに観たウディ・アレン作品はたぶん「Midnight in Paris」だけだと思う(「Wonder Wheel(邦題:女と男の観覧車」もなんとなく観た気はするのだけど記憶が曖昧。なんか観覧車が出てくるしゃれたヨーロッパ映画みたいのを観た記憶はあるのだが、大学生の時だった気がしたので公開2017年となると違う気もするが、どうだろう。あれ、本題関係なくもやもやしてきた。明日見よう。以上、長すぎる補足)ので、偉そうに今回の作品は、、とか言うわけには行かない。

ただ、Midnight in Parisと同様に今作でも、流行に乗れない偏屈な男と、必要以上に現実的(ときに世俗的)な恋人がうまくいかない、という構図だった。

内容を思い出してみると、まあ正直、ありがちな設定だと思う。実際、主人公も恋人も、キャラクター設定から逸脱した意外な行動などはないし、展開も割とお約束な感じではある。

こう書いてしまうと、あんまり見たいと思わない人の方が多いかもしれない。だけど、ここら辺は、人の嗜好によるところが大きいと思うのだけど、私はこの映画のそういう部分がとても心地よかった。

私はこの映画のどこに惹かれたんだろう。

一つには、私が「流行に乗れない偏屈な男」と自分を重ねるところがきわめて大きいというところにある。今回この映画を観終えて、どこに惹かれたかと考えていた時に少し納得したことがある。というのも、人生を振り返ってみたときに、自分の中にもどこかそういう「現実的になれない自分」というのがいたのだけど、ずっとそれを恥ずかしいと思い、必要以上に現実的にならないといけないと自分を自分で力づくで押さえつけていた節がある気がする。

それが、この映画ではそんな自分と重なる偏屈な主人公が現実(=彼女)に対して取った行動が、すごく自分を勇気づけるところがあったんだろう。

もう一つは、ウディ・アレン監督の、空気感の作り方の巧みさだと思う。深夜のパリにしても、雨のニューヨークにしても、すごく意味のある情景に描かれている。雨の東京や雨の大阪や、雨のサンフランシスコや、雨のジャカルタではこういう訳にはいかなかったと思ってしまうのは、日本人的な西洋への過度な憧れのせいだろうか。

とにかく、この映画のいいところは「雰囲気のよさ」なのではないか。

こう考えたとき(というか、最近友人と映画の話になって自覚したことでもあるのだけど)、自分の趣味は基本的に「雰囲気嗜好」なんじゃないかと思った。大好きな映画「LIFE!(原題:The Secret Life of Walter Mitty)」(2014年日本公開)もそうだし、小説でも一番好きな作家、村上春樹もそう、音楽でも、ドレスコーズや踊ってばかりの国はそうだし、スピッツもきっとそうだと思うのだけど、どれも雰囲気がすごくいい。

しかし、「あいつ、雰囲気はいいんだよね」というと、どこか「実力のなさをオーラっぽいものでごまかしている」という風に聞こえてしまう。少なくとも自分は、他人がそういう風に捉えている気がしていたから、「私は雰囲気のあるアートが好き」とは言わなかったけど、実際はそういう話ではなくて、作品を作った人たちの芯のある思想と細かいところまでこだわった表現力がなす、独特の世界観があるからこそ感じる雰囲気の良さなんだろう。

そんな感じで、この映画を観た感想をまとめると、「ああ、無理して現実的な人間になんて、ならなくてもいいのかもな」というところだと思う。凡庸、あるいは凡庸以下の私には、非現実的に生きるなんて贅沢な選択をする権利はないと思っていたのだけど、少なくとも、自分の意に反して無理やりに現実的な人間を演じる必要はないのだろう。もちろん、だからといって、明日には会社をやめようとか、世界一周をしようとか、そういうことが言いたいわけではなくて、自分の頭にある世界観(というと過度に高尚に聞こえるけど、要はこだわり)みたいなものを大切にしてやってもいいのかなと思ったという話。

散髪しにショッピングセンターに行って思いつきで観た映画で、ここまで色々考えるとは思わなんだ。

最後に、映画には全く関係ないのだけど、自分の大好きな空気感の2つのバンドの、それぞれの中でも自分が大好きな空気感の曲を貼っておく。

ドレスコーズ「スーパー、スーパー、サッド」

踊ってばかりの国「光の中に」

踊ってばかりの国もまた、本当にいいバンドだと思う。ボーカル下津光史のすごく特徴的でずば抜けて真っ直ぐな声質と不安定な精神が作り出す世界が大好き。

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